半年以上前から胃のもたれ感、みぞおちの痛みがあります。先日胃カメラの検査をしましたがはっきりした異常はないといわれ機能性ディスペプシアといわれました。どんな病気でしょうか。
【中日新聞 2014年1月21日 掲載】
6ヶ月以上前からつらいと感じる食後のもたれ感、早期飽満感(食事開始後すぐに満腹感がありそれ以上食べられなくなる感じ)、心窩部痛(みぞおちの痛み)や心窩部灼熱感(熱感を伴う不快症状)の症状が1つ以上あり、胃内視鏡検査で逆流性食道炎や胃・十二指腸潰瘍などの器質的疾患を認めない場合で最近3カ月間は上記基準をみたす場合に機能性ディスペプシアと診断されます。胃カメラでは異常がないのに胃の症状が続く場合などがこの疾患にあてはまります。胃運動機能異常、胃粘膜の炎症、内臓知覚過敏、精神神経因子などのさまざまな原因が複雑に関与しているといわれており、治療は主に食生活や生活習慣の改善と薬物療法になります。薬物療法では消化管運動調整薬、酸分泌抑制薬、漢方薬、抗不安薬など使用しますが原因が複雑なため治療も複数の薬を組み合わせて用います。
先日テレビで慢性胃炎にもピロリ菌の除菌治療が保険適用になったといっていました。慢性胃炎でも除菌治療したほうがいいのでしょうか。
【中日新聞 2013年6月18日 掲載】
日本人で罹患数が一番多いがんは胃がんで、胃がん患者の90%以上はピロリ菌に感染しているといわれています。WHO(世界保健機関)では1994年にピロリ菌を胃がんの発がん因子に認定しています。ピロリ菌の感染者で胃がんになる人はごくわずかですが、ピロリ菌を除菌することで胃がんの発生率を1/3まで減らすことができます。今後はピロリ菌に感染した慢性胃炎の段階で除菌治療が可能となることで胃がんの発生がかなり減少すると期待されています。ただし、よく誤解されていることですがピロリ菌を除菌したからといって胃がんにならないわけではありません。一度でも感染していた方はそうでない方にくらべ胃がんの発生リスクは高いですから、除菌治療後も定期的に胃内視鏡検査をうけて胃がんの早期発見に努めることは除菌治療と同じくらい大事なことです。
先日、のどのいがいが感や違和感が続くので耳鼻科を受診したところ、のどには異常なしといわれ、もしかしたら逆流性食道炎ではといわれました。どういった病気でしょうか。
【中日新聞 2013年2月5日 掲載】
逆流性食道炎とは胃酸や胃の内容物が胃から食道へ逆流することで食道の粘膜障害を生じた状態をいいます。最近では食生活の欧米化、ピロリ菌の感染率の低下、肥満の増加などにより胃酸の分泌が増えていることで急激に増加しており罹患率は10~15%といわれています。典型的な症状は胸やけや酸味、苦みのこみあげですが、質問者のようなのどの違和感だけや慢性に続く咳だけという一見関係なさそうな症状の場合もあります。逆に原因がはっきりしない咳や咽頭違和感が続く場合は逆流性食道炎を疑う必要があります。診断には胃内視鏡検査が必須ですが、内視鏡では明らかな食道炎の所見を認めないのに逆流症状を呈する患者さんも多くいます。治療は食生活の改善などの生活習慣指導とともに薬物療法がおこなわれます。PPI(プロトンポンプ阻害剤)とよばれる胃酸をおさえる薬が第一選択となります。
若いころから胃潰瘍で治療を続けています。先日胃カメラを施行したらピロリ菌の除菌治療を勧められました。
ピロリ菌とはどのようなもので、除菌治療とはどのようにするのですか。また、除菌治療はすべきですか。
【中日新聞 2011年2月16日 掲載】
ピロリ菌とは胃の中に生息する細菌です。日本では約6000万人の方が感染していると考えられており、特に60歳以上の方ではその約6割の方が感染しているといわれています。
ピロリ菌は胃潰瘍、十二指腸潰瘍の主要な原因とされ、潰瘍患者の約8~9割の方に感染を認めます。以前は胃・十二指腸潰瘍は再発率の高い疾患でしたが除菌治療により9割以上の人が再発しなくなりました。
質問者のようなピロリ菌を保有する胃潰瘍の方には除菌治療は第一選択となります。除菌治療は3種類の薬を1週間内服するだけです。
主な副作用は下痢、軟便で2~3割の方に認めますが重篤となることはまれです。
1回目の治療で7~8割の方が除菌できますが、除菌できなかった方には薬を変えて再度治療をおこないます。
ぜひこの機会に除菌治療をおこなって下さい。